海苔の生産量が少なくなり江戸前の魚が消えた理由
「データーが少ない」「現場を確認していない」と言った意見があるかと思いますが、個人的見解です。
 
 
海苔の生産量が少ない為に、販売したくても販売できないと言う悪循環が数年続いております。
「水質の悪化」を原因とさせたい流れがある為なのでしょうか? しかし、それ以外の理由があるのです。
排水の規制により東京湾の水質が向上しています。年々水質が良くなり沖は青いきれいな海です。
にもかからわず海苔・魚介類が年々減少しているのです。
 
原因1 増えすぎた野鳥による生態系の破壊
三番瀬には多くの野鳥が来ます。野鳥保護により野鳥が増えすぎました。野鳥の中でも「カモ」が海苔を食い荒らすのです。
我々が一年間丹精込めて作り上げた海苔が、たった一日で食い荒らされたりするのです。
今では幻となりつつある海苔の支柱養殖で、今年度の初摘み最高級の一番海苔を採取しようとしたのですが、食い荒らされてしまいました。この事を「バリカン症」という、いかにも病気のような名前で呼ばれておりますが、単なるカモによる食い荒らしです。
魚にも野鳥による被害があります。アナゴやカレイなど20年前は目視で泳いでいるのが確認出来る位たくさんいました。
アサリの漁をしているとジョレン(カゴのようなもの)の中に入ってくることもありました。ここで取れた魚はおいしく、今でも忘れることが出来ません。
しかし、今は見ることが出来ません。それは「カワウ」の繁殖によることが原因です。「カワウ」は空から一気に水中に潜り魚を食べます。これにより魚の稚魚が食い荒らされ三番瀬から消えてしまいました。
このように生態系を破壊している生物が自然扱いを受け、伝統的な海苔には注目されないのでしょうか?ある意味、野鳥に極上の「エサ」をあげているので野鳥好きの方から礼を言ってほしいくらいです。
 
 
原因2 猫実川流域の海流の滞り
かつて、埋め立て前の三番瀬では海流がよく高級な海苔が採れました。現在は海流が遅く一定方向になり、猫実川流域は海流が滞りヘドロ状になりました。また、海苔・アサリの漁場であったにもかかわらず海水の滞りにより海の雑草とも言える「アオサ」が発生し海の栄養分が減ってしまいました。我々の考えでは地盤沈下した海底に砂をまき、かつての水流を取り戻すことです。
しかし、一部の団体が「カキ礁」と名乗る歴史に全く関係のないものをシンボルマークとし「百年前からある」と訴え、この考えに反対しております。しかも、マスコミを利用し全国的に広め、覆砂計画を唱える漁師を悪者にする報道をしているのです。
こんな討論を長年やっていくうちに漁師は収入が減り生活が出来なくなってしまいます。高齢化が進み引退する漁師が多くなってきました。無念の思いで今年2名引退する漁師がいるのです。
我々には後継者不足・高齢化といった問題があるので残された時間がありません。このままだと後何年かで海苔漁が出来なくなってしまいます。100余年以上の歴史があり、全国でもトップクラスの海苔が食べられなくなってしまうのです。
 
 
自然相手の仕事で言葉では語れない多くの苦労があります。命の危険がある海での仕事をして、上記のようなことで生産量が減り悔しくてたまりません。
趣味で海を守るのと、命を懸けて生活を支え海を守るのは、わけが違うのです。
 
 
 
 
 
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